百花蜜(千草蜜)ってどんな蜜? ~「単花蜜」と「百花蜜」の違いについて~
「この『千草蜜』っていうのは、何の花の蜜なんですか?」
お店でお客様からこのような質問をいただくことが度々ありましたので、今回は、百花蜜(千草蜜)について話していきたいと思います。(当店では、一般的にいう百花蜜に「千草蜜」という名前を付けています。)
まず、ハチミツの種類を大きく分けると、「単花蜜(たんかみつ)」と「百花蜜(ひゃっかみつ)」の2つがあります。今回は、この2つの特徴を比べながら、百花蜜(千草蜜)について話していきたいと思います。
単花蜜とは ―ひとつひとつの花の個性を味わうハチミツ―
(これから話に出てくる「単花蜜」と「百花蜜(千草蜜)」は、現在、ほとんどの養蜂で飼育されている「セイヨウミツバチ」が採るハチミツのことをいいますので、予めご承知おきください。)
単花蜜とは、その大部分が特定の花を蜜源とするハチミツのことです。アカシア蜜、レンゲ蜜、トチ蜜など、花の名前がついたハチミツは、すべて単花蜜です。国内で生産されている単花蜜は約30種。海外に比べて非常に多いといわれています。
日本でこれほど多くの種類の単花蜜が採れる理由は、大きく2つあります。
1つ目は、日本の自然の豊かさと四季がはっきりしているところです。南北に長い日本列島には、亜寒帯の針葉樹林から亜熱帯の多雨林まで、また低地から高山帯まで、多様な気候と地形があります。そこに多種多様な植物が育ち、蜜源となる花の種類も豊富になるのです。
2つ目は、日本の養蜂家の丁寧な仕事です。日本の養蜂家は、1つ1つの巣箱を細やかに管理しながら採蜜を行います。目的の花が終わるとすぐに蜜をしぼり、次の花の蜜が混ざらないようにするのです。この作業には手間がかかるため、海外ではあまり行われず、広大な土地に多くの巣箱を置き、一度にまとめて採蜜する傾向があります。
多種多様な単花蜜を楽しめるのは、日本のハチミツならではの特徴です。
それでは、そもそもなぜ「一種類の花の蜜」を採ることができるのでしょうか。
ミツバチに「アカシアの花だけから集めきて」と指示することは、もちろんできません。実は、ミツバチには「訪花の一定性」という習性があります。一度「この花」と決めると、同じ種類の花を続けて訪れるのです。養蜂家はこの習性を利用し、目的の花が一斉に咲く時期と場所を見計らって巣箱を置きます。アカシアが満開の山に巣箱を置けば、ミツバチたちはほぼアカシアばかりを訪れます。こうして単花蜜が採れるわけです。
百花蜜とは ―その土地の、その季節の記録―
一方の百花蜜は、ミツバチがさまざまな花から蜜を集めて出来たハチミツのことをいいます。
「百花」という名前から「100種類の花が入っている」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。「百花繚乱」「百戦錬磨」の「百」と同じで、「たくさんの」という意味です。当店ではこのハチミツに、多種多様な草花の蜜という意味を込めて「千草蜜」という名前を付けています。
日本に生息するニホンミツバチとセイヨウミツバチは、合わせて約200〜300種の植物に訪花すると考えられています。実際に1つのハチミツに何種類の蜜が入っているかを正確に把握することは難しいのですが、国内の百花蜜はおおよそ10〜30種類程度の花の蜜が入っているといわれています。
百花蜜の魅力は、何といってもその複雑な味わいです。多様な花の風味が混ざり合うため、単花蜜にはない深みが生まれます。しかも、採れた年・時期・場所によって味も香りも色も異なります。つまり百花蜜とは、「その土地の、その季節の花々の記録」と言えます。その土地のブドウから作るワインでいう「テロワール」に近いものが、百花蜜にはあるのかもしれません。
ちなみに、日本在来のニホンミツバチのハチミツは、基本的にすべて百花蜜です。ニホンミツバチはセイヨウミツバチに比べて訪花する植物が多岐にわたり、特定の花を集中的に訪れることはしません。また、花の蜜だけでなく、甘露蜜や樹液なども集めてきます。採蜜は秋を中心に年1〜2回と少ないため、巣の中でさまざまな季節の蜜が熟成され、混ざり合い、複雑な味わいを生み出します。
まとめ
「単花蜜」と「百花蜜(千草蜜)」、それぞれの違いについてお話してきました。
日本は、その地理的な恵みによって多種多様な植物が自生する国です。養蜂家はこの利点を最大限に活かし、日本ならではの個性豊かなハチミツを作り出しています。
花ごとの風味を楽しめる「単花蜜」と、数十種類の蜜が混ざり合って複雑な味わいを生む「百花蜜(千草蜜)」。ぜひ、ハチミツを選ぶ際の予備知識として参考にしていただければ幸いです。
筆者:専務
