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蜂追い、蜂の子料理の作り方 ~ 蜂を追い、採り、食すこと~

2026年10月16日
蜂追い、蜂の子料理の作り方 ~ 蜂を追い、採り、食すこと~

私たちが暮らす諏訪をはじめ、県内外のいくつかの地域には、長い年月をかけて受け継がれてきた「地蜂猟(じばちりょう)」という営みがあります。地蜂(地面に巣を作る蜂:クロスメバチ)を追いかけ、その巣を採る。単なる狩りではなく、蜂の習性をよく観察し、道具を工夫して蜂を追い、採取して食すまでの一連の営みです。

当社の社長は約20年近く地蜂猟を続けており、長年培ってきた経験をこの記事にまとめました。読みながら地蜂猟を実践してみてもよいですし、初めて知った方は「蜂とこういう関わり方もあるのか」と感じていただければ幸いです。


1. いつ、何人で、何を持って行くのか

  • 時期:9〜10月
  • 心得:二人以上で行く/走らない/服装にも注意
    ※「走らない」のは、山には自然にできた障害物がたくさんあるため、転んで怪我をしないためです。
  • 持ち物:小ハサミ/マーカー/追い綿/エンマク(燻煙用の道具)/ライター/鎌/新聞紙/蜂ネット/ゴム手袋/時計

用語のメモ

  • マーカー:蜂の背中に付けて、個体を見分けるための印。
  • 追い綿:飛んでいく蜂を見失わないよう目印として持たせる綿。
  • エンマク:火を点けて煙を出し、蜂の動きを眠らせる(鈍らせる)ための物。

2. 「スカシ」 蜂を目で見つけて追いかける

地蜂猟の基本になるのが「スカシ」という目視の技術です。飛んでいる蜂を目で追い、巣のありかを突き止めます。天気が良く、広く見通せる日と場所が最も「スカシ」に適しています。

地蜂の見分け方

山にはいろいろな虫が飛んでいます。その中から地蜂だけを見分ける決め手は、「飛び方」です。地蜂は、ほとんど曲がらずに直線的に飛びます。それに対して、多くの昆虫は不規則に曲がりながら飛びます。

地蜂は、餌を探す場所へ真っ直ぐ飛び、巣に向かって真っ直ぐ帰るため、途中で曲がらないのです。なので、たくさんの虫が飛んでいても、まっすぐ飛ぶものだけに絞ると良いでしょう。

「スカシ」を行う流れ

  1. 飛び方から「あの蜂は巣へ帰るな」と判断し、目で追いながら移動する。
  2. 蜂の行き来の回数(頻度)がある所の当たりを付ける。巣から出てくる蜂が一箇所から見え始める状態を見逃さないこと。そこが巣の入口です。

これが「スカシ」であり、その巣を採る方法が「スカシ猟」と呼ばれます。


3. 餌でおびき寄せて追う方法

目で追うだけでなく、餌場に設置した餌にかかった蜂を捕まえて「追い綿」を体に括り付け、その蜂を飛ばして追う方法があります。私たちは普段、このやり方をしています。以下が一連の流れです。

餌場を設置 → 蜂を待つ → マーカーを付ける → 戻るまでの時間を測る → いちばん早い蜂を追う → 巣を見つける

  1. 餌場に餌を設置する:餌(魚・イカ・エビ・脂身の少ない肉など)を、山の中や蜂が来そうな「林道の横」や「林のきわ」、「荒し畑」などの所(=餌場)に置きます。日陰になる所に掛けると餌が長持ちします(日が当たりすぎると餌が乾いてしまい、蜂が寄らなくなります)。多いときは、一日に10箇所ほど掛けていくこともあります。
  2. 蜂を待つ:しばらく待つと、蜂が餌につられてやって来ます。餌場には他のスズメバチも来ますので、その場合は餌を食べているところを落として追い払います。
  3. マーカーを付ける:まずは、餌を取りに来た蜂の背中に、色チョークやマーカーペンで1匹ずつ印を付けます(赤・黄・緑など)。
  4. 戻るまでの時間を測る:マーカーを付けた蜂が、それぞれどのくらいで餌場に戻ってくるかを測ります。蜂は餌を得ると巣へ持ち帰り、幼虫に与えてから、餌を得るために、また同じ餌場に戻ります。戻る時間によって、餌場から巣への距離がおおよそ分かります。
    • 1〜2分=すぐその辺に巣がある可能性が高い。
    • 約3分=近くもなく遠くもないので中間。
    • 約5分以上=追える範囲ではあるが、遠い。
  5. 最も早く帰ってきた蜂を追う:最も早く餌場に帰ってきた蜂を選び、「追い綿」を蜂の体に括り付けて飛ばし、その蜂をひたすら追い続けます。
  6. 巣を見つける:これを繰り返すことで、何人かで手分けして蜂の巣の穴を見つけ出します。

4. 蜂を追って巣にたどり着くまで

ここでは、どのように蜂を追っていくのかについて話していきます。まず、役割を分担します。

最初に、餌を得た蜂に「追い綿」を括り付けて飛ばす役を1人置きます。蜂を追って「見える所まで視認」したら、そこをA地点とします。他の人はA地点へ移動して、飛んでくる蜂を待ってまた追います。そこをB地点として、また移動して待つ。C地点、D地点…と、蜂が巣穴に降りるまで続ける、いわば「順送り」のリレーです。より効率よくするには、直線上で先回りして待つのがコツです。


5. 巣の取り出し方

用意:ゴム手袋/蜂ネット/鎌/エンマク/ライター/新聞紙(広げて巣穴の近くに置く)

  1. 巣穴を観察する。巣穴の方向と門番蜂を確認。門番蜂が入口に見える場合は、巣は入口から近い。帰ってきた蜂が穴のどの方向へ歩いていくかも見る。
  2. エンマクに火を点けて巣穴に入れる。巣穴の前に体で立ち、帰ってくる蜂をブロックする(帰ってくる蜂は何かを持っているので、刺されることはない)。
  3. エンマクを抜き、指で巣穴をたどる。方向を見失いそうなときは穴に目印を付ける。エンマクは消えるまで続ける。
  4. 巣を取り出し、新聞紙で包む。
  5. 巣穴に小枝などを入れ、帰ってくる蜂が入れないよう、残りの新聞紙でフタをする。
    (巣にフタをするのは、後で巣に戻すときに、蜂に刺されないようにするため。帰ってくる蜂は刺さない。)
  6. 少し離れた所で、鎌で巣板を1枚ずつにし、持ち帰る巣板と、巣に戻す巣板を分ける。
  7. 巣に戻す巣板と蜂を新聞紙に包んで、元の巣の中に入れる。


6. 20年かけてたどり着いた「追い綿」の種類

この「追い綿」にはこだわりがあり、長年かけて試行錯誤を重ねてきました。

 

段階使った素材良かった点困った点・結果
初期真綿(まわた)大きく伸び、軽い手にベタベタつく
↓普通の綿とても軽く、見やすい木の枝で綿が絡んでしまう。
↓発泡スチロール棒状のものに糸を付ける問題は糸の部分。脚や木の葉に引っかかる。高い所では取れない。
現在ビニール引っ張って伸ばし、ねじると糸状に。どこへ立ててもスルッと抜ける端が引っかかって飛ばないことがほとんどない。約20年かけて到達。

現在の作り方は、買い物のレジ袋を引っ張って伸ばし、その部分をねじって糸状にするというものです。伸ばせば伸びますので、蜂の体にも括り付けやすい。「蜂がどこへ行こうともスルッと抜け、端が引っかかって飛ばないことがほとんどない」のが長所です。

私たちの印象では、このレジ袋方式を使う人はごく少ないようです。テレビなどで紹介されるのは、発泡スチロールを使う人が多いです。


7. 山の蜂を絶やさないこと

私たちが心がけているのは、「地蜂を絶やさない」という考え方です。一つの山で何十個も巣を掘ってしまうと、翌日にはその山の地蜂が少なくなってしまいます。だからこそ、採ったあとに巣の一部と蜂を戻すのです。

具体的な方法

採った巣のすべてを持ち帰ることはしません。巣の状態を見て、持ち帰る巣と残しておく巣を必ず、選別します。残った巣を、残った蜂が再び巣を作れるようにセットして、蜂と一緒に埋めます。すると蜂が巣を大きくしていく可能性が高まります。

ある年の9月に、約1kgの巣を採り、実験的にその巣の2枚を戻して、巣を作りやすくして埋めておいたところ、10月の終わりに見ると、蜂が頻繁に帰っており、掘ってみるとまた1kgありました。

これを機に、「戻して埋めることで、蜂を絶やさないきっかけになる」と確信し、以降は必ず行っています。


8. 蜂の子の食べ方

蜂の子の食べ方はさまざまですが、調理法は大きく2つです。

  • 煎り(いり)ハチの子:フライパンで簡単に炒る。
  • 甘露煮(かんろに):醤油やザラメなどで時間をかけて煮る。

蜂の子を巣から取り出す(下処理)

  1. 巣板の幼虫が入っている面を下にしてピンセットで上から叩いて、土・ごみを取り除く。
  2. ピンセットで蜂の子を取り出す。

コツは、「ある程度むいたら、また裏返して叩いて土を取り除く」を繰り返すことです。

煎りハチの子の作り方

  • 取り出したハチの子をフライパンで炒る。
  • 火加減:弱火〜中火
  • 調味:塩 少々、もしくは醤油 少々

最初は中火にして、蜂の子を入れたら、箸であるいは、フライパンを揺すって動かす。

ある程度火が通ったら弱火にして、塩か醤油のどちらかを選んで入れる。

少し焦げ目がついて、蜂の子がパラパラし始めたら完成。

甘露煮作りと楽しみ方

甘露煮は、醤油とザラメでじっくり時間をかけて煮ていきます。おつまみとしてはもちろん、味噌などとすりつぶして五平餅のタレに、のり巻きの具、混ぜごはん、刻みネギと天ぷら、お好み焼きや玉子焼きの具にも。地域の暮らしに根づいた多彩な食べ方があります。


9. もしもハチに刺されたら

最後に、山で気をつけたい応急処置もご紹介します。

  • 刺されたら、まず「絞り出す」。人間の皮膚は毒が入ると、刺された穴を塞いでしまう作用が働きます。塞がれる前に、毒を摘まみ出しましょう。その後、水を流しながら続けます。
  • 異常な腫れなどの症状が出たら、命に関わるので医者へ。
  • 市販の毒吸引器(患部に当てて引くと真空になって毒を吸う器具)が約1,000円で売られています。1つあると便利です。
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