蜂追い、蜂の子料理の作り方 ~ 蜂を追い、採り、食すこと~
私たちが暮らす諏訪をはじめ、県内外のいくつかの地域には、長い年月をかけて受け継がれてきた「地蜂猟(じばちりょう)」という営みがあります。地蜂(地面に巣を作る蜂:クロスメバチ)を追いかけ、その巣を採る。単なる狩りではなく、蜂の習性をよく観察し、道具を工夫して蜂を追い、採取して食すまでの一連の営みです。
当社の社長は約20年近く地蜂猟を続けており、長年培ってきた経験をこの記事にまとめました。読みながら地蜂猟を実践してみてもよいですし、初めて知った方は「蜂とこういう関わり方もあるのか」と感じていただければ幸いです。

1. いつ、何人で、何を持って行くのか
- 時期:9〜10月
- 心得:二人以上で行く/走らない/服装にも注意
※「走らない」のは、山には自然にできた障害物がたくさんあるため、転んで怪我をしないためです。 - 持ち物:小ハサミ/マーカー/追い綿/エンマク(燻煙用の道具)/ライター/鎌/新聞紙/蜂ネット/ゴム手袋/時計
用語のメモ
- マーカー:蜂の背中に付けて、個体を見分けるための印。
- 追い綿:飛んでいく蜂を見失わないよう目印として持たせる綿。
- エンマク:火を点けて煙を出し、蜂の動きを眠らせる(鈍らせる)ための物。
2. 「スカシ」 蜂を目で見つけて追いかける
地蜂猟の基本になるのが「スカシ」という目視の技術です。飛んでいる蜂を目で追い、巣のありかを突き止めます。天気が良く、広く見通せる日と場所が最も「スカシ」に適しています。
地蜂の見分け方
山にはいろいろな虫が飛んでいます。その中から地蜂だけを見分ける決め手は、「飛び方」です。地蜂は、ほとんど曲がらずに直線的に飛びます。それに対して、多くの昆虫は不規則に曲がりながら飛びます。
地蜂は、餌を探す場所へ真っ直ぐ飛び、巣に向かって真っ直ぐ帰るため、途中で曲がらないのです。なので、たくさんの虫が飛んでいても、まっすぐ飛ぶものだけに絞ると良いでしょう。
「スカシ」を行う流れ
- 飛び方から「あの蜂は巣へ帰るな」と判断し、目で追いながら移動する。
- 蜂の行き来の回数(頻度)がある所の当たりを付ける。巣から出てくる蜂が一箇所から見え始める状態を見逃さないこと。そこが巣の入口です。
これが「スカシ」であり、その巣を採る方法が「スカシ猟」と呼ばれます。
3. 餌でおびき寄せて追う方法
目で追うだけでなく、餌場に設置した餌にかかった蜂を捕まえて「追い綿」を体に括り付け、その蜂を飛ばして追う方法があります。私たちは普段、このやり方をしています。以下が一連の流れです。
餌場を設置 → 蜂を待つ → マーカーを付ける → 戻るまでの時間を測る → いちばん早い蜂を追う → 巣を見つける
- 餌場に餌を設置する:餌(魚・イカ・エビ・脂身の少ない肉など)を、山の中や蜂が来そうな「林道の横」や「林のきわ」、「荒し畑」などの所(=餌場)に置きます。日陰になる所に掛けると餌が長持ちします(日が当たりすぎると餌が乾いてしまい、蜂が寄らなくなります)。多いときは、一日に10箇所ほど掛けていくこともあります。
- 蜂を待つ:しばらく待つと、蜂が餌につられてやって来ます。餌場には他のスズメバチも来ますので、その場合は餌を食べているところを落として追い払います。
- マーカーを付ける:まずは、餌を取りに来た蜂の背中に、色チョークやマーカーペンで1匹ずつ印を付けます(赤・黄・緑など)。
- 戻るまでの時間を測る:マーカーを付けた蜂が、それぞれどのくらいで餌場に戻ってくるかを測ります。蜂は餌を得ると巣へ持ち帰り、幼虫に与えてから、餌を得るために、また同じ餌場に戻ります。戻る時間によって、餌場から巣への距離がおおよそ分かります。
- 1〜2分=すぐその辺に巣がある可能性が高い。
- 約3分=近くもなく遠くもないので中間。
- 約5分以上=追える範囲ではあるが、遠い。
- 最も早く帰ってきた蜂を追う:最も早く餌場に帰ってきた蜂を選び、「追い綿」を蜂の体に括り付けて飛ばし、その蜂をひたすら追い続けます。
- 巣を見つける:これを繰り返すことで、何人かで手分けして蜂の巣の穴を見つけ出します。
4. 蜂を追って巣にたどり着くまで
ここでは、どのように蜂を追っていくのかについて話していきます。まず、役割を分担します。
最初に、餌を得た蜂に「追い綿」を括り付けて飛ばす役を1人置きます。蜂を追って「見える所まで視認」したら、そこをA地点とします。他の人はA地点へ移動して、飛んでくる蜂を待ってまた追います。そこをB地点として、また移動して待つ。C地点、D地点…と、蜂が巣穴に降りるまで続ける、いわば「順送り」のリレーです。より効率よくするには、直線上で先回りして待つのがコツです。

5. 巣の取り出し方
用意:ゴム手袋/蜂ネット/鎌/エンマク/ライター/新聞紙(広げて巣穴の近くに置く)
- 巣穴を観察する。巣穴の方向と門番蜂を確認。門番蜂が入口に見える場合は、巣は入口から近い。帰ってきた蜂が穴のどの方向へ歩いていくかも見る。
- エンマクに火を点けて巣穴に入れる。巣穴の前に体で立ち、帰ってくる蜂をブロックする(帰ってくる蜂は何かを持っているので、刺されることはない)。
- エンマクを抜き、指で巣穴をたどる。方向を見失いそうなときは穴に目印を付ける。エンマクは消えるまで続ける。
- 巣を取り出し、新聞紙で包む。
- 巣穴に小枝などを入れ、帰ってくる蜂が入れないよう、残りの新聞紙でフタをする。
(巣にフタをするのは、後で巣に戻すときに、蜂に刺されないようにするため。帰ってくる蜂は刺さない。) - 少し離れた所で、鎌で巣板を1枚ずつにし、持ち帰る巣板と、巣に戻す巣板を分ける。
- 巣に戻す巣板と蜂を新聞紙に包んで、元の巣の中に入れる。

6. 20年かけてたどり着いた「追い綿」の種類
この「追い綿」にはこだわりがあり、長年かけて試行錯誤を重ねてきました。

| 段階 | 使った素材 | 良かった点 | 困った点・結果 |
|---|---|---|---|
| 初期 | 真綿(まわた) | 大きく伸び、軽い | 手にベタベタつく |
| ↓ | 普通の綿 | とても軽く、見やすい | 木の枝で綿が絡んでしまう。 |
| ↓ | 発泡スチロール | 棒状のものに糸を付ける | 問題は糸の部分。脚や木の葉に引っかかる。高い所では取れない。 |
| 現在 | ビニール | 引っ張って伸ばし、ねじると糸状に。どこへ立ててもスルッと抜ける | 端が引っかかって飛ばないことがほとんどない。約20年かけて到達。 |
現在の作り方は、買い物のレジ袋を引っ張って伸ばし、その部分をねじって糸状にするというものです。伸ばせば伸びますので、蜂の体にも括り付けやすい。「蜂がどこへ行こうともスルッと抜け、端が引っかかって飛ばないことがほとんどない」のが長所です。
私たちの印象では、このレジ袋方式を使う人はごく少ないようです。テレビなどで紹介されるのは、発泡スチロールを使う人が多いです。
7. 山の蜂を絶やさないこと
私たちが心がけているのは、「地蜂を絶やさない」という考え方です。一つの山で何十個も巣を掘ってしまうと、翌日にはその山の地蜂が少なくなってしまいます。だからこそ、採ったあとに巣の一部と蜂を戻すのです。
具体的な方法
採った巣のすべてを持ち帰ることはしません。巣の状態を見て、持ち帰る巣と残しておく巣を必ず、選別します。残った巣を、残った蜂が再び巣を作れるようにセットして、蜂と一緒に埋めます。すると蜂が巣を大きくしていく可能性が高まります。
ある年の9月に、約1kgの巣を採り、実験的にその巣の2枚を戻して、巣を作りやすくして埋めておいたところ、10月の終わりに見ると、蜂が頻繁に帰っており、掘ってみるとまた1kgありました。
これを機に、「戻して埋めることで、蜂を絶やさないきっかけになる」と確信し、以降は必ず行っています。
8. 蜂の子の食べ方
蜂の子の食べ方はさまざまですが、調理法は大きく2つです。
- 煎り(いり)ハチの子:フライパンで簡単に炒る。
- 甘露煮(かんろに):醤油やザラメなどで時間をかけて煮る。
蜂の子を巣から取り出す(下処理)
- 巣板の幼虫が入っている面を下にしてピンセットで上から叩いて、土・ごみを取り除く。
- ピンセットで蜂の子を取り出す。
コツは、「ある程度むいたら、また裏返して叩いて土を取り除く」を繰り返すことです。
煎りハチの子の作り方
- 取り出したハチの子をフライパンで炒る。
- 火加減:弱火〜中火
- 調味:塩 少々、もしくは醤油 少々
最初は中火にして、蜂の子を入れたら、箸であるいは、フライパンを揺すって動かす。
ある程度火が通ったら弱火にして、塩か醤油のどちらかを選んで入れる。
少し焦げ目がついて、蜂の子がパラパラし始めたら完成。
甘露煮作りと楽しみ方
甘露煮は、醤油とザラメでじっくり時間をかけて煮ていきます。おつまみとしてはもちろん、味噌などとすりつぶして五平餅のタレに、のり巻きの具、混ぜごはん、刻みネギと天ぷら、お好み焼きや玉子焼きの具にも。地域の暮らしに根づいた多彩な食べ方があります。
9. もしもハチに刺されたら
最後に、山で気をつけたい応急処置もご紹介します。
- 刺されたら、まず「絞り出す」。人間の皮膚は毒が入ると、刺された穴を塞いでしまう作用が働きます。塞がれる前に、毒を摘まみ出しましょう。その後、水を流しながら続けます。
- 異常な腫れなどの症状が出たら、命に関わるので医者へ。
- 市販の毒吸引器(患部に当てて引くと真空になって毒を吸う器具)が約1,000円で売られています。1つあると便利です。
