【Part3】 ダンスで伝えるミツバチの秘密 ― 尻振りダンスの解明
はじめに ― 前回のおさらいと今回のテーマ
前回のコラムでは、ミツバチのダンスには「円ダンス」と「尻振りダンス(8の字)」の2種類があることを紹介しました。円ダンスは巣から100m以内の餌場(蜜が豊富に採れる場所)を伝え、尻振りダンスは100m以上離れた餌場を伝えています。最終章となる今回は、この「尻振りダンス」の実態に迫っていきます。
太陽をコンパスに ― 餌場への「方向」の伝え方
ミツバチは、太陽をまるでコンパスのように使い、頭部の向きで餌場の方向を示します。
巣箱の中は暗く、巣板が垂直に下がっているため、ミツバチはまるでマーベルコミックのスパイダーマンのように垂直の壁をよじ登りながら働いています。その環境の中で方向を正確に伝えるために、ミツバチは重力の反対方向(鉛直方向)に見立てた「太陽」を基準にして、餌場への方向を伝えるようになりました。これは「太陽コンパス」と呼ばれ、ミツバチだけでなく他の昆虫にも見られる能力です。
方向を示すダンスの法則は
- 巣板の真上(鉛直方向)にダンス → 太陽の方向に餌場がある
- 巣板の真下(重力の方向)にダンス → 太陽と反対方向に餌場がある
つまり、鉛直方向とダンスの角度=太陽と餌場の角度という法則で方向を伝えているのです。
また、曇りで太陽が見えない日には、偏光パターンを利用します。人間には見えないこの光を、昆虫たちはしっかりと感知できるとされています。
尻振りの「時間」が距離を語る ― 餌場への「距離」の伝え方
餌場の情報を踊りで伝える働きバチ(以下、ダンサー)は、尻振りの時間の長さで巣から餌場の距離を伝えています。尻振りが長いほど、餌場は遠いという仕組みです。
ただし、最長の尻振り時間は約1秒間(距離にして200〜300m程度)とされており、それ以上離れた距離でもほとんど変わらないようです。一方で、餌が豊富であるほど、激しく長く踊る傾向があるといいます。
ダンスを囲む仲間たち ― 情報をどのように受け取っているのか
ダンサーが踊り始めると、周囲の働きバチたちが集まり、触覚をダンサーに向けて伸ばします。この触覚にある音受容器が、ダンスの振動を感知し、尻振り時間を読み取っていると考えられています。
さらに、ダンサーは餌場の蜜を仲間に分け与えることで、餌探しへの動機づけも行っていると言われています。情報を受け取った働きバチの中には、同じ尻振りダンスを繰り返し行いながら情報を共有するものも現れ、やがて餌場の方向へと飛び立っていきます。
おわりに ― まだ解明されていないミツバチのダンス
3回にわたってミツバチのダンスについて話してきました。
ミツバチについて調べていくと、「8の字ダンス」という言葉をよく見かけますが、改めて深掘りしてみると、太陽を使った方向伝達の法則、尻振り時間による距離の伝達、円ダンスというもう一つのダンスなど、ミツバチならではの面白い生態をいろいろ発見することができました。
それでも、ミツバチのダンスによる情報伝達については、まだ解明されていないことが多いと言われています。今後の研究によって、さらに新たな発見が生まれるかもしれません。小さな生き物の中に宿る面白い生態にこれからも目が離せませんね。
筆者:専務 山田

