フェロモンで読み解くミツバチ社会
フェロモンと聞くと、魅力があり、カリスマ性のある人に対して、あの人には人を惹きつけるフェロモンがあるとか、そんな憶測をしたりするものです。人間以外の動物界においては、フェロモンは存在しており、蛾は空中のフェロモンで交尾相手を引き寄せ、アリはフェロモンで餌までの道を辿ったりしています。
動物には、自分の匂いを残すために排泄物や分泌物をかける「マーキング行動」という習性があります。目的は、排泄ではなく、匂い付けであり、動物にとって大切なコミュニケーションの1つとして行っています。代表的な例でいうと、犬のマーキングがあります。犬が散歩などで外に出た時、ある特定の場所に自分の尿の匂いをつけることで、「ここは自分の場所だ」と他の犬に伝えたり、また他の犬の匂いから情報を読み取ったりすることで、相互にコミュニケーションを取っているといわれています。
ミツバチも同じように、体から出す分泌物(フェロモン)を使って、コミュニケーションを取っています。例えば、巣の中を統制したり、仲間に場所を知らせたりしています。フェロモンの数もさまざまあり、目的や用途によって使い分けています。では、ミツバチには、どのようなフェロモンがあり、何の目的で使っているのかを、今回、すべて例に挙げると限がないので、その中で3つを紹介したいと思います。
(1) 女王フェロモン
女王フェロモンとは、女王蜂が頭部にある大顎腺から分泌する物質のことです。このフェロモンを働き蜂に与えることによって、働き蜂の卵巣の発達を抑制します。つまり、メスの働き蜂が卵を産めないようにするのです。なぜそうするのかというと、女王蜂の仕事は卵を産むことなので、働き蜂が卵を産んでしまうと、女王蜂の存在意義がなくなってしまうからです。(※ちなみに働き蜂が持っている毒針は、産卵管が退化したものです。)
(2) 集合フェロモン
仲間に特定の場所を教えるために分泌するフェロモンです。体の腹部の背面側(お尻に近いところ)にあるナサフス腺から分泌するため、お尻を上の方向に向けて翅を羽ばたかせて、仲間に場所を知らせます。春に新居へ引っ越した後や、女王蜂が交尾した後、迷子にならないように仲間の働き蜂が、巣の出入り口付近で、ここがあなたの巣だよ!と匂いで教えてくれます。(※ここでいうお尻とは、ミツバチの腹部のことで、毒針に近いところにあります。想像しやすいようにお尻という表現を使用しています。)
(3) 餌場(えさば)につけるフェロモン
餌場とは、花の蜜(ミツバチの餌)がたくさん採れる植物がある場所のことで、他の働き蜂が道に迷わないように、足から油状のフェロモンを分泌して餌場に塗り付けます。餌場マーキング(道しるべ)フェロモンともいわれています。
その他にも、分泌器官として、毒針の毒を分泌する毒腺、仲間に危険を知らせる警報フェロモン、ミツロウを分泌するワックス腺などがあります。
ミツバチは、さまざまな分泌器官を持っていることで、1コロニー(群)約2万匹もの数の仲間たちと生存していけるようにお互いに多様なコミュニケーションを駆使しています。もちろん、分泌器官以外にも、コミュニケーションの方法を持っていますので、それらを総合するとより多様になります。ミツバチの生態に驚くばかりです。

筆者:専務 山田
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参考資料:ミツバチの秘密 高橋純一著